2023年4月定例句会第141回以降


2023年4月定例句会第141回
撮影に背き背かず春の猫 雄蕉 一人静闇より戻り二人かな 雄蕉
朝桜駆け抜けていく一年生 あきこ 花の雲空の青さの迫りくる あきこ
花ざかり見上げ動画を古里へ ヒサ 寝る前の再点検やおぼろ月 ヒサ
散歩道桜蕊降り薄化粧 風渡る若葉の生気日ごと増し 啓子
名城の御堀も風情花筏 啓子 老母の背を追いかけ追い越す落花かな きょうこ
帰る雁故郷の焦土を知らざりし きょうこ ミサイルにめげず花咲くドニエプル 弘棋
初ツバメ板一枚のおもてなし 古希祝う船上の古酒花筏
あれもこれも許せそうです花の昼 あやこ 診る度に生れ日問はる残花かな 五郎
昭和の日昔気質のまま老ゆる 五郎 共に飲もう花影の死神たち あやこ
大仏の肩艶やかに花吹雪 あきこ うぐいすの声道連れに上り坂 弘棋
元寇や空押し寄せて降る黄砂 弘棋 山の駅桜の中から電車来るむ 啓子
冴え返る開店前の日向かな 啓蟄や大地目覚めか穴無尽
咲き満ちてあふれんばかり花の山 あきこ 筆取りて好きや嫌いや春の雨 雄蕉
直売所車を止めて春キャベツ 啓子 真っ青なる空へ花びら舞いあがる ヒサ
花冷えや一人に届くライスカレー ヒサ 春の山金時さんの生家跡 啓子
髪切りて走り行く子や一年生 しばらくは風に吹かれて花の中 あきこ
山笑ふ子ども五人のかくれんぼ きょうこ 梅花藻の清き流れや夏隣
琴線に触れ聴くチェロや春愁 弘棋 散る花の色放ちたる手水鉢 きょうこ
車窓にも花満つスマホ閉じたまえ あやこ 路地裏にそぼふる雨や百千鳥
名を継げば相似て嬉し春の空 雄蕉 静かなる絶叫を聴く落椿 あやこ
縁側の茶飲み話蝶の昼 五郎 春の雷癌細胞を抱きつつ 五郎
にぎやかに友と御膳や桜鯛 ヒサ 清明や横隔膜を働かす 五郎
飽きもせず姿見覗く新入生 病む友の花の知らせに安堵せし きょうこ
舞い落ちるひとひらは蝶舞いあがる あやこ お澄ましやよく笑う児の春の夢 雄蕉
異国びと仰山にゐて花見船 切通し抜けて尋ねる古都の春 弘棋
2023年5月定例句会第142回
若楓水面に揺れて影もまた あきこ 新緑を抜けまた新緑の中へ あきこ
前後ろ薄笑う壁五月病 あやこ 惜春や今なお続く食日記 ヒサ
青梅やどんな姿に変わりゆく 夏帽子いつも笑顔で澄む女 雄蕉
天仰ぐ彩雲浮かび夏に入る 頬なぞる五月の風に緑の香 あやこ
柿若葉木の大方を羽織りけり きょうこ 青嵐防衛をいう不戦国 啓子
猫パンチ届かず空を鯉幟 弘棋 日照りにはおろおろ歩く木偶の坊 雄蕉
風光る古刹の屋根の反り具合 啓子 蓬の葉加え我が家の菖蒲風呂 五郎
憲法と子供の間みどりの日 五郎 夕立やずぶ濡れになるくそ度胸 啓子
雑草の個性輝く五月かな あやこ 記念樹も大樹となりぬ薄暑かな きょうこ
草刈れば茅葺小屋に煙立つ 雄蕉 木々を背に山道燃ゆる躑躅かな 弘棋
外に出て巡るも楽し春の庭 ヒサ 牡丹咲き色溢れけり花浄土
母の日のはや夕暮になりにけり あきこ 地下鉄を出るや祭りに溶け込みぬ 五郎
何もかも輝く五月なりしかな あきこ 一日がたちまち暮れて夏兆す 啓子
庭隅の芍薬大き花をあげ ヒサ 鯉幟川面に泳ぐト音記号 きょうこ
雨風に負けない体海開き 雄蕉 鯉幟タオルも共に吹かれをり ヒサ
ビルの谷間に捨てられし明日五月病 あやこ 夏安居は野菜玄米味噌少し 雄蕉
新緑の濡れて明るさ増しにけり 五郎 頬杖の角度薫風受く角度 あやこ
牛歩でも自立の日々や麦の秋 啓子 初めての寝返りの子に初夏の風 あきこ
青梅の少し紅みて落つる音 きょうこ うっすらと汗ばみ登る坂薄暑 弘棋
白藤の潔き白さや人の波 ゴッホ絵の続く車窓や麦の秋 弘棋
庭の蕗香りを立てて卓の上 ヒサ 四十雀鳴きかわし合い恋の歌
銘木の箸でくずさむ冷奴 きょうこ 歯磨きの清涼感や夏に入る 五郎
緑道に影戯れて黒揚羽 弘棋


2023年6月定例句会第143回
風やさし木陰もやさし街薄暑 あきこ 朝顔の双葉に小さき光あり あきこ
梅雨寒や保温節電鍋帽子 ヒサ きらきらと雨粒光る濃紫陽花 ヒサ
夏の夜の声なき声を聴く女 雄蕉 軒先に置き配ひとつ梅雨の空 弘棋
刈り上げし十薬の香の迷いゐる 五郎 木下闇大阪城に並ぶ首 雄蕉
民家園庭に小風や夏座敷 弘棋 盤はさむ名人戦の夏羽織 五郎
十薬の白さひときわ夕散歩 啓子 忌日来るひらひらと来し黒揚羽 あやこ
老鶯の声惜しみなきラブコール きょうこ 六月やMRIの孤独感 啓子
空の色映して青し手毬花 弘棋 神妙に茅の輪くぐりて母探す きょうこ
梅雨空撃つ青き玉欲し指鉄砲 あやこ 灯と戯れし火蛾の静かな夜明けかな 五郎
母の日や渋茶羊羹なお旨し ヒサ 溝浚え終えて立ち話弾みけり あきこ
きらきらと飛魚とぶ波間カーフェリー あやこ 青梅のたわわ更なる余白なし きょうこ
七変化群がり咲いてこその彩 あきこ 夏木立抜けて現る人の声 きょうこ
春光を浴びたる子等やみすゞの詩 ヒサ 藪の径「蛇に注意」の札あり 啓子
蛍狩り三界を去る木偶の坊 雄蕉 恥じらいの失せし木々の葉万緑す あやこ
浴槽の桧の香り五月闇 五郎 花摘みの乙女一目と菖蒲園 弘棋
生かされて今九合目桐の花 啓子 きな臭き核の話題や黒揚羽 五郎
病葉きしむ正義に国憂う きょうこ 梅雨冷えもあちこち痛い温暖化 雄蕉
蚊帳を吊る時代もありてワンプッシュ 啓子 万緑や小鳥ふらふら風波に ヒサ
官邸の蜘蛛の糸はや切れる時 雄蕉 遠足の弾む声乗せ発車ベル あきこ
さらさらと聞き流す愚痴ところてん あやこ 雲の峰眺む園児や散歩カー 弘棋

2023年7月定例句会第144回
応援の一喜一憂夏の雲 あきこ つぎつぎと予定の埋まる夏休 あきこ
海はもう見るためのもの夏休み あやこ 病み抜けし友へピンクの夏帽子 あやこ
鎌倉や行き交う人の夏衣 ヒサ 枇杷を食むぼろりぼろりと種ふたつ ヒサ
築五十年息をひそめて夜半の雷 五郎 つと立てる香水の香の零れ落つ 五郎
輪道を走れば流る夏木立 弘棋 街の夜の灯りも消えて雷光る 弘棋
暗闇に心が開く花火なり 雄蕉 白百合の余生や古都のバーマダム 雄蕉
夏蝶や幾山河越え来し小庭 初蝉のかろやかな声木々の間に
濃紫陽花母の享年はるか越え 啓子 水打ってゆふべの風の中にをり あきこ
旅路前じいじに託す金魚鉢 遠雷の音聞き走る母よ母よ
足踏みのミシンに頼る夏着かな きょうこ 白浴衣少女もしばし女なり
大南風大樹小樹をすり抜けて きょうこ 緑蔭に愛犬づれの人同士 啓子
家事終えてほっと一息新茶汲む ヒサ 籐椅子にもたれ名画の人となる きょうこ
いつよりか一人に余るかき氷 あやこ 過疎の地に甲高き声夏休 五郎
満塁のバッターボックス大夕焼 あきこ お中元宛名の主は施設かな
星月夜動くもの無き過疎の村 あやこ 風にのり祭囃子のちらほらと あきこ
夕立や時には杖となりし傘 ヒサ 田の水のほのかに白し星月夜 あやこ
噴水を終日浴びて黒御影 五郎 夏めくや野島は磯の香り吹く ヒサ
白泡のこぼれジョッキや玉の汗 弘棋 サングラス外し見舞いのベルを押す 五郎
逢えなくば岩も砕けよ神の夏 雄蕉 力瘤ムキムキ見せて雲の峰 弘棋
芋煮会子らの笑顔にほっこりと 向日葵の叫び振り振るハンカチーフ 雄蕉
継ぎし家仏具を磨いて茄子の馬 啓子 ふるさとの訛り飛び交う夏休
初蝉のじいじと呼びて雨上がり 銀漢に縁深き友逝き給う 啓子
慣れぬ果て体温超ゆる暑さかな きょうこ じいちゃんの家に合宿と梅雨あがる
夏の旅揃いの土産バスの棚 戦いに正義閉じ込め合歓の花 きょうこ
青い目に鬼灯市の赤眩し 弘棋 鯵〆て先ずは一献白ワイン 啓子


老いの夏ジグソーパズル収まらず 雄蕉
2023年8月定例句会第145回
願ひごと風とたはむれ星祭 あきこ 奥社にて聞く郭公の木霊かな 弘棋
和紙彩る七夕祭の仙都 秋の竿オノゴロ島の地固まる 雄蕉
秋立つや孤独を癒すリス親子 ヒサ 終戦忌古傷遥か尚深く 啓子
閉されし忌中の家や凌霄花 五郎 秋の雷雑草を跨いで軒を借り きょうこ
終戦忌無音の空に刻みけり 雄蕉 人生も片陰のあり街景色 弘棋
銀の砂中の一粒流れ星 啓子 朝顔や鏡に寝足りぬ朝の顔 五郎
流れ星今日の一日余生とす きょうこ 目覚めれば日暮しの声身にしみる ヒサ
白靴の若人抜きてうふふふふ 大リーグ兜雄叫び秋の陣 雄蕉
大輪を夜空に生けて大花火 弘棋 ひまはりの空輝けり日向灘 あきこ
満天の花火の雫吾に迫る 啓子 怪獣の骨描きをる雲の夏
コロナはや帰り支度の今朝の秋 弘棋 星流れ闇美しく濡らしけり あきこ
露天風呂二人で眺む星月夜 秋立つやきらり診察女医の眼鏡 五郎
夕焼けやいつも山からくる日暮 あきこ 夏の雲思いのままにエンドレス 啓子
空いた手を妻に通院秋立てり 五郎 白球に千の眼や秋の空 きょうこ
葉を摘みて柿葉ずしを今年また ヒサ 浮世絵をどこまで歩く秋扇 雄蕉
終戦忌転じて祝う不戦の日 雄蕉 朝露の青きに染まる蛍草 きょうこ
戦争はもうしないはず敗戦忌 あきこ 山の日や名山連なるわが故郷 五郎
短夜を惜しむ読書や賢治の死 ヒサ 夏の夜に聴くラプソディーインブルー 弘棋
花火の夜行き交う人は皆笑顔 啓子 雨止みて一斉に聞ゆ蝉時雨
盆の月今日は父母想う日よ きょうこ 亡き母の夏の柳川鯵に化す ヒサ
2023年9月定例句会第146回
姫神の琵琶湖を揺らす白の月 雄蕉 朝窓を開ければそっと秋の風 弘棋
新米のとぎ汁清し二合分 きょうこ 大阪に維新押し上げ黄の月 雄蕉
今日もまた耐えねばならぬこの残暑 あきこ 秋晴の誘い出したるこの人出 あきこ
平地斜面境目なく葡萄棚 五郎 座敷居や満天授かり大花火 きょうこ
牧の馬たてがみ吹かれ野分かな あやこ 芒梅雨というを知りたる余生かな 五郎
落ち蝉の生き急ぎ行く輪廻かな 啓子 頬でる風の幾筋秋立ちぬ あやこ
墓洗う空ひゅうひゅうと千の風 弘棋 歳時記を身の傍らに夜長かな 啓子
忘れゆくつわものどもの秋の暮 今朝の秋雨戸の外の雀かな
踏む峰や群れには遠きイワシ雲 新じゃがをじっくり煮込む外は雨 ヒサ
会う人の挨拶一番炎暑から ヒサ 戦い終え涙と砂と秋の空
八十路過ぎ身の丈ほどの良夜あり きょうこ 沈みゆく東京を焼く紫の月 雄蕉
色鳥と舞い遊びけり大樹小樹 残暑増すドリルの音や工事道 弘棋
鰯雲夕日を受けて崩れけり あきこ 秋の蚊の陶器に止まる軽さかな 五郎
主より庭の主なり次郎柿 きょうこ 富士山を蹴って躓く青の月 雄蕉
なつかしき歌声響く蔦の家 あきこ 駅弁に「限定品」とあり茸飯 きょうこ
眼閉ずればたちまち落つる虫の闇 五郎 新涼やするっとはまる貝ボタン あきこ
はるばると陸奥へ来て残暑かな あやこ 控えめの老生活や寝待月 五郎
やぶ枯らしそのしぶとさに乗っ取られ 啓子 夫呼ばな窓のあなたの今日の月 あやこ
秋の夜に聴く一枚のコルトレーン 弘棋 露けしや拉致されし子等沙汰もなく 啓子
一番は我が家となりし夏の旅 神々が遊ぶ花野や苗場山
新幹線夢わくわくと秋日和 古里は車窓に山と鰯雲 弘棋
片陰を行き交う人は皆スマホ ヒサ さわやかな大樹の風を受くる朝 ヒサ
収穫を供え今宵の月を待つ ヒサ 陸奥の棚田へ届く月の脚 あやこ
地球と云う巨艦に乗りて波高し 啓子 花咲きて急ぎ切らるる藪枯らし
押し寄せる鬼の日本海赤の月 雄蕉 潮騒が主役となりて新松子