2023年10月定例句会第147回以降


2023年10月定例句会第147回
大廊に入るか去ぬるか秋茜 どんぐりを踏みしだきけりパキパキと
名月や今日の湯張りは遅くなり 庭の菊墓参りにはまだ咲かず ヒサ
遠景に富士浮かびゐる花野かな あやこ 錦秋に響く弦楽四重奏 五郎
這い上る霧の速さや身延山 啓子 良く笑う友を誘いて花野かな あやこ
踏みしめて秋の足音生まれけり きょうこ 洋梨と洋酒器用に洋菓子舗 弘棋
風捉へ風を離して秋桜 あきこ 庭木刈る陽のたっぷりとこぼれけり きょうこ
秋の暮山野に帰る墓じまい 雄蕉 本籍は誰も住まない芒原 雄蕉
コスモスや風のなすまま色乱れ 朝顔の種採り人が母の手に
朝食の菜園に摘む秋菜か ヒサ 吊るし柿不明ポイントあふれ出る 雄蕉
残る虫応える虫のなかりけり 五郎 浅漬けの大根噛む歯残しをり 五郎
信濃路の石仏に沿ふる野菊かな あやこ 信玄の隠し湯とやら秋の宿 啓子
秋晴れというあっぱれの如きもの 弘棋 いわし雲いよよ老いたり白内障 啓子
日暮まで花野の風となりにけり あきこ 鳳仙花はじけて路地の昼下がり あきこ
野菊咲く小町通りの日溜りに あきこ 新涼や風に吹かるるだけでよし あきこ
朝露や陽にほどけゆき落ちていく ぴーと合図ねぐらに急ぐ鹿の声
更衣おしゃれ心の老いてなほ ヒサ 新涼や一気に動く朝仕事 ヒサ
蹴とばせば煙吐き出す毒茸 五郎 鍵盤の音引き出して秋紡ぐ 五郎
厨の灯消して書を読む良夜かな あやこ 秋風の小町通りの醤油の香 あやこ
長針と短針遅々と秋の夜半 弘棋 体験で打つ新蕎麦の色香り 弘棋
案山子にも大志ありやと北を指す きょうこ 藤袴名の無き墓の後ろにも きょうこ
生活のリズムは霧に物価高 雄蕉 秋風や髪すく指の指輪痕
秋風にページめくられ寝ぼけ顔 虚ろいや雲間に隠る月の顔 雄蕉
ハッブルで探る銀河や裏表 弘棋 柿の実は葉落つるを待ち赤くなり きょうこ
蜂の巣やいなくなるまで待ちし日々 ヒサ 一房の葡萄めがけて一直線
露けしや御手植え杉の奥の院 啓子 水澄むや格調高き昴逝く 啓子
2023年11月定例句会第148回
クッキーの焼き上がり待つ小春の日 あきこ まず一灯てっぺんの赤寒椿 あやこ
刻々と迫りくる老い秋深む ヒサ ほの明かり落す水辺の冬紅葉 あきこ
子は父にぽっくり母に七五三 五郎 掃き終えて背より攻めくる落葉かな きょうこ
落葉踏む人それぞれに踏む歴史 弘棋 菰巻きの松を影絵に城ヶ島 弘棋
古九谷の絵皿の雅式部の実 啓子 世間体冬満月に脱ぎ捨てる 雄蕉
文化の日才能多彩ひかりけり 野も山も紅葉に埋まる大八洲 五郎
存分に鳥たちへやる今年柿 あやこ 青空へ伸ばす脚立や富有柿 あやこ
空っ風世界の地図を吹き飛ばす 雄蕉 秋深む法座に在りて宗祖の忌 啓子
落ちきらず迷う木の葉のうらおもて きょうこ 柿紅葉友の形見を握りしめ ヒサ
振り払うまとわりつきし後れ蚊よ 信楽にワインとチーズ勤労感謝の日 きょうこ
許せないこと増え死ぬに死ねず冬 雄蕉 黄落や地に還るものみな静か 啓子
駆け巡る落葉と子等とつむじ風 凩や猫は施設の友を待つ ヒサ
ひらがなの墨の香や冬日和 あきこ 枝に残る雨滴冬日にきらめける 五郎
円卓を囲む日曜おでん鍋 ヒサ 鎌倉の車夫の綿入れ今朝の冬 弘棋
行く秋やマスク水筒ついてくる 五郎 ハロウィンの渋谷にDJポリスかな あやこ
路地裏の垣ひっそりと姫椿 弘棋 欧州に渡る木枯らし橋も無し 雄蕉
マネキンのマフラー深紅冬来たる あきこ 綿虫のなにか言いたげ目の高さ きょうこ
母の家羽釜で炊きし栗ごはん 啓子 山降し新そば啜りひと呼吸
身にしむや終活という後回し 啓子 秋日和足の弱りのもどかしく ヒサ
立冬や世界に悲劇収まらず 五郎 冬一番欧州の夢消えるかな 雄蕉
裸木に冬日の斜め長き影 きょうこ 起き上がり起き上がりして秋桜 あやこ
落葉降るほろほろひらり土となり 人波に熊手や揺れて酉の市 弘棋
日向ぼこしているような道祖神 あきこ


2023年12月定例句会第149回
吹き荒れた木枯らし一号はたと止む
啓子
空青しまばゆき銀杏落葉かな
あきこ
暮らし向き上りし気分千枚漬
五郎
着地して尚風情あり寺もみじ
啓子
夏過ぎて冬来たるらし里の熊
雄蕉
蜜柑山夕陽を影に瀬戸の海
弘棋
一息つく能見堂跡冬すみれ
あやこ
ブロックの穴よりのぞく野菊かな
ヒサ
パンデミック地球丸ごと冬来る
きょうこ
ねんねこを無用となりて返さるる
AIに馴染めぬ二人日向ぼこ
五郎
キウイの種歯に挟まれて冬の旅
五郎
冬晴れやテニスに興ずる老仲間
十一枚めくりめくりて師走かな
きょうこ
青天へ大根十本行儀よく
ヒサ
冬晴れの只中にありケアホーム
あやこ
猫の目に人の世如何に漱石忌
弘棋
寒昴眠らぬ東京蒼白き
きょうこ
一椀を色とりどりにのっぺ汁
啓子
冬の月眉の如くに微笑みぬ
ヒサ
しづけさを更に深めて散紅葉
あきこ
ガザ受難聖地は嘆く聖夜の死
雄蕉
舟をこぐ手にはニーチェか日向ぼこ
弘棋
その中に虫食いもあり柿落葉
あきこ
冬ざるるダム湖に眠る村の黙
あきこ
おでん鍋家族の名残手放せず
啓子
三渓園門限ありて日の短
啓子
牌楼の灯に華やいで年忘れ
弘棋
レモンもぎシフォンケーキで子等招く
ヒサ
冬晴れや一直線の飛行機雲
ヒサ
冬虹をぼんやり仰ぐ朝模様
障子貼り新たな光あふれけり
午前二時新聞受の冴ゆる音
五郎
受診番号確認してる日短か
五郎
ヒトの世に熊が乱入冬ざるる
雄蕉
年の暮国家は地より浮き上がる
雄蕉
古屋にも表札残れり冬日差す
きょうこ
降る星に十二月八日父をみる
きょうこ
良いことの無かったひと日冬の虹
あやこ
ありがとうをクルクル丸め古暦
あやこ
初夢や天才サトシ世に出でよ
雄蕉
終章のかくもかろやか紅葉舞ふ
あやこ
残り日の数に追われて年用意
弘棋
あれこれと買い物の多し年の暮


さざんかの散るにまかせて雨の庭
あきこ

2024年1月定例句会第150回
初暦余白に流る未知の日々 あきこ 箸紙の名の墨色の麗しく あきこ
凍て空の災難事故に憂いひけり ヒサ 雪道を馳せ面会の十五分 ヒサ
青森の夜はドレス着る雪女 雄蕉 魔術師が国の借金雪おろし 雄蕉
白鷺の翔ちし光や桂川 あやこ 切に祈る逃げられぬ地へ春よ来い あやこ
令和六年淑気崩るる能登半島 五郎 餅つきの杵を持つ手や初々し
お年玉兄の袋をのぞきけり 三文の徳を超えたり初日の出
人の世も群れて漂い鴨の陣 弘棋 雪景色幻想的な山路かな
またひとつ年重ねしと初日記 きょうこ 逆光にきらめくダイヤ鴨の水尾 五郎
冬麗の天橋立浪高し あやこ 元旦の神のいたずら能登の島 きょうこ
書初やちびれた筆のかすれ文字 ヒサ 初夢は悪夢となりて能登の郷 弘棋
早朝の坂をジョギング息白し 満天の星屑降れり霜の夜 あきこ
啜る蕎麦想うは郷の細雪 北風吹かば猿入浴の地獄谷 弘棋
七草粥朱の椀に野の薄緑 あきこ 野に山に還る枯葉を掃く夕べ あきこ
タクシーの訛り懐かし年の暮 ヒサ 年新た日記家計簿気も弾む ヒサ
超常に美女現れる春を待つ 雄蕉 マフラーと写真と銃を撃つ男 雄蕉
小半日友の愚痴聴く女正月 あやこ 久に訪ふ高千穂峡の小雪かな あやこ
三が日災害報道切れ目なく 五郎 冬富士の夕日に映ゆるバスの窓 五郎
足の下サクサクサクと霜柱 茜さす平和を祈る大旦
天空に凛と浮かぶや冬銀河 弘棋 ぼろ市にペルシャの長き水煙管 弘棋
初詣二拍の後の長きかな 初東風や梢の先に紅見っけ
息災の字に力あり賀状かな きょうこ 春近し水輪の襞の輝けり きょうこ
木責めの木今なく雪の生家跡 五郎 辰の絵の破魔矢柏手清々し きょうこ
節分の鬼も疲れる陽いずる国 雄蕉


2024年2月定例句会第151回
スバシリのたゆる水面や春の風 遺失物手許に返る年の暮 啓子
初採れの香りを調理蕗の薹 ヒサ 早春の光あふれる野に空に あきこ
春虚ろ守銭奴はただ喚くなり 雄蕉 植木鉢割りて鎮まる春一番 あやこ
鍋焼はまだふつふつと友といる 啓子 両の手に落ちてはとけし春の雪 きょうこ
春の雪一両電車に急ぎ足 きょうこ ガチャガチャと循環バスの雪解道 五郎
欄干に白いオブジェか春カモメ 弘棋 枯芝にいろいろの彩見え隠れ
梅ヶ香や人それぞれに物語 あきこ 鏡見る夫のコートの捨てられず ヒサ
生涯を逃げないつもり春の雪 あやこ 春浅しはしゃぐ女の若返り 雄蕉
八分咲き老いを忘れし梅見かな きょうこ バレンタイン量より質と諭す兄
魂の還る処か冬入日 啓子 内蔵助雪の別れを押し殺す 雄蕉
焼海苔のパリパリ折るる余寒かな 五郎 これじゃあねどすんどすんと牡丹雪 五郎
薄墨の雲染めにけり春夕焼 駅降りて余寒と歩く夜の帰途 弘棋
お日さまに話しかけてゐる犬ふぐり あきこ 春一番木の芽ほころぶ雑木山 あきこ
寄す波の飛沫や薫る春の海 弘棋 伝えたきこと耳うちし春一番 きょうこ
つかの間の花人となり赤信号 引き潮の曳き残せしや桜貝 あやこ
鬼という心の闇に豆を撒き 弘棋 冬の月問うて詮なき地の惨禍 啓子
恋するや南を目指す春帽子 雄蕉 春めくや伊豆急ホームに待ち合わす 五郎
木漏れ日の中の我が陰冬木立 ヒサ 天揺らぎ万物動く春一番
細雪もっともっとと空仰ぐ 妹遺きし後の淋しさ風花す ヒサ
裸木を枝移りするリス二匹 啓子 十和田湖の乙女や春を木霊せり 雄蕉
バレンタイン皺寄す口にチョコレート 五郎 春節の人吐き出して中国航空 弘棋
八十路過ぎ主婦も定年山笑う きょうこ 飽きもせず雨戸開け閉め春の雪
貝寄風や逢わねばならぬ友のあり あやこ 歯磨き粉絞りつくして二月かな
光にも色と香とあり春立つ日 あきこ 節分の大豆ご飯に母偲ぶ ヒサ
テニスコート魔球に変わる春疾風 ふたつみつ河津桜の開き初む あやこ
2024年3月定例句会第152回
エイプリルフール猿の惑星見て涙 雄蕉 四月馬鹿自由の女神横たわる 雄蕉
住む町をいとおしみつつ春散歩 啓子 亀鳴くや水に命の戻り来る 啓子
浅春の分水嶺より水の旅 あやこ ふたつみつ痛みを包む春ショール あやこ
満開の紅梅に人佇めり ヒサ げんげ田に大の字残す幼き日
野火走る新しき芽を願いつつ 菜の花に朝の光や卵焼き きょうこ
ちゃぶ台の父は聞き役しじみ汁 きょうこ 卒業と別れ重なる震災地 五郎
啓蟄や国会審議石の中 五郎 草餅を思い出話語りつつ あきこ
歩いても歩いても菜の花の中 あきこ レガッタの華夏寇満ちるシナの海 雄蕉
カフェ流るショパンにふっと春愁 弘棋 見つめれば痘痕隠して春の月 弘棋
輪島より来し春塵か筆箱に 五郎 潮騒を遠くに蛤椀に咲く あやこ
落椿立ち止まり見ゆもう一度 板海苔をパリパリ朝の一人食 ヒサ
なぜうまい田舎ラーメン山の春 雄蕉 湯の宿を決めて身支度春帽子 啓子
蕗の薹揚げてほろ苦缶ビール 啓子 北南向き吹き替えて春の風 弘棋
故郷は川近き里つくしんぼ あやこ 救急車鳴り響く夜や底冷えす ヒサ
友からの干し柿卓に咲く話題 ヒサ 芽吹き初む山のもてなし尾根伝い きょうこ
野の原の足元の春何処までも 杖の先ここにかしこに菫草 五郎
キッチンにカタカナレシピ春野菜 きょうこ 初蝶来光まぶしきぶな林 あきこ
クローバーの四葉去年はこの辺り 五郎 鳶の輪を見て人の和を想う春 弘棋
春雨の粒散る窓を眺む午後 弘棋 彼岸入り昼食抜いてスカッとする 雄蕉
引く波に返す波音桜貝 あきこ カルガモも鯉も悠々池の春 啓子
春の月夜風に濡れてをりにけり あきこ あれそれの答えあれそれ山笑う あやこ
タクト振る巨星も座に入る春北斗 きょうこ 春寒やダンボールベッドの能登想う ヒサ


江戸偲ぶ桜餅手に隅田川