2024年4月定例句会第153回以降


2024年4月定例句会第153回
教会にバロック流る春の午後 弘棋 故郷の風土の匂い蛙鳴く 五郎
木の芽吹く風はきみどりうすみどり あきこ 青空に音符のごとく飛花落花 あやこ
打つ雨に流るる景色春惜しむ 五郎 遠山の白き点描山桜 あきこ
雨しずくまとひて今朝の桜かな あきこ 春野菜光も共にたしなみぬ ヒサ
蕗味噌をつけて旨しや焼にぎり ヒサ 東京湾船の銀座か風光る 啓子
春場所や幕尻まさかの優勝旗 啓子 木の間より囀りこぼる四分音符
接木して遠き実りを夢みつつ 絨毯を黄色に敷きて花菜畑 弘棋
菖蒲咲く声を落とすや琵琶法師 雄蕉 五月晴れ籠もるゲームは国家なり 雄蕉
香る葉もいい塩梅に桜餅 弘棋 引き留める術なく桜北上す あやこ
片吹の風吹き落とす実梅かな あやこ 究極の囀り山に谺して きょうこ
ランドセル背中をはみだす春の陣 きょうこ 摘み花と云う大仕事あり桃の花 啓子
入学の待ち遠しくてランドセル 五郎 花に酔ふこの倖せをとこしえに 五郎
藤棚にむらさきの風吹きぬけり あきこ 風に揺れ光に揺れて雪柳 あきこ
夜桜や灯に光る雨の粒 ヒサ 行く春や友の船旅今いずこ ヒサ
桃の花甲斐の盆地に色を添え 啓子 黄砂降る遠山靄にかき消され 啓子
車窓より見ゆる菜の花黄金色 はらはらと千鳥ヶ淵の花筏
夏来たる祇園の鐘を聴く夜かな 雄蕉 モナリザはにっこりビール飲めという 雄蕉
捩花の捩じり余せしうすみどり あやこ 鶯の読む経聴きて山の寺 弘棋
空塞ぐほどの大樹の芽吹きかな きょうこ 新緑の真っ只中にケアホーム あやこ
故郷の訛無くなり啄木忌 きょうこ 柔らかき陽射し集めて春キャベツ きょうこ
春疾風佇めならず千鳥足 ヒサ 沙羅双樹咲かぬ女の笑顔かな 雄蕉
清明や新調スーツ初々し 五郎 西方の父母の面影彼岸かな
見る人に心たゆたう花筏 弘棋


2024年5月定例句会第154回
黒く塗れ白紙の地図にガザの夏 雄蕉 鯉のぼり空飛ぶ車見当たらぬ 雄蕉
新緑を屋根にし登る観音堂 きょうこ 梅の実の主なきとて巫女の手に きょうこ
露寇にも耐えて今年も麦の秋 弘棋 富士山を切り取り初夏の写真帳 弘棋
まさをなるエニシダ垂るる路地裏に ヒサ 母の日や子等の招きに装いて ヒサ
額の花年が重荷となり始む 啓子  白玉のそのやわらかき噛みごこち 啓子
鳥帰る一天の青翳りなし あきこ 薫風や馬駆けてくる草千里 あやこ
岩魚串泳ぐ姿に焼かれをり あやこ たんぽぽの絮飛び立ちて夢無数
谷川岳帽子飛ばして夏疾風 半袖に代へる決断夏蝶来 五郎
草笛や故郷に続く茜空 五郎 南風を行くサイレンもしや誰ぞ逝く あやこ
春日より断捨離急ぐ日々なりし ヒサ 香水をつけるでもなく我に買ふ きょうこ
師の文字の強き筆圧麦の秋 啓子 翡翠の掠める水の光りけり あきこ
宮中を狙う雷雲の淵 雄蕉 面智男雲を読み解く愉悦入道雲 雄蕉
夏蝶の影にまとわりて遊歩道 弘棋 空豆の届き友の走り書き きょうこ
夏空を見たくてジャンプ池の鯉 きょうこ 森の香を包みてほのか柏餅 弘棋
生家とは親と居た場所蝉の穴 啓子 いかなごのくぎ煮名人偲びけり ヒサ
頂きしメスの筍美味なりし ヒサ とりあえず今日の平穏新茶汲む 啓子
山法師咲かせて肥後の老老舗 あやこ 茂りより緑の風や頬を打つ
読書にも飽き誰も来ず夏の昼 滴りを集めて溢る露天の湯 あやこ
何もかも伸びるのびるよ五月来る 五郎 母の日も忘るる母に届く花 五郎
蟻の穴二つ三つあり姿どこ 盛り上がる新鋭力士五月場所 五郎
老鶯の声も景色と見る眺め 弘棋 タマネギを剥いて残りし者なりし 雄蕉
降り続く雨に蕗煮るうすみどり あきこ 満開の杜鵑花の空の日の光 あきこ
野茨の匂ひてあまき風の中 あきこ


2024年6月定例句会第155回
緑陰や風のあとまた水の音 あきこ 春惜しみつつ人生を楽しまん ヒサ
巡礼のきびしさに耐ふる春遠し ヒサ 懸命のゆっくりなんですかたつむり あやこ
田植えする児等の奮闘未来あり きょうこ 降り続く雨に植田の濁り初む 五郎
時の日の手錠のごとき腕時計 あやこ 渋谷から夕蝙蝠の轟や 雄蕉
迎え火も悪行なりや卑弥呼さま 雄蕉 守宮の子張りついたまま夜の窓 啓子
バグパイプ響く異国はばらの頃 啓子 夏野へといざ出発と草刈機
さしあたりどくだみの花花瓶に あじさいの融通無碍や禅心 弘棋
駅募金ちゃりんと能登へ響く夏 弘棋 太陽に砂粒光る夏の浜 弘棋
ここまでとけふの日課の草を引く あきこ 万緑や百メートルを十秒で あきこ
怪人がうろうろ空き家増えし夏 雄蕉 リハビリに選びし径は夏木立 五郎
ほたるいか目と目が合いてにらめっこ ヒサ あじさいのどの花びらもルノワール きょうこ
口利きの無き日のありや夏の月 五郎 風に咲くマーガレットの白い波 あきこ
夕風にさそはれ烏瓜の花 あきこ 友を待つ柏餅香を放ちけり ヒサ
打ち寄する波春光を放ちつつ ヒサ あじさいの好きな娘も嫁ぎけり きょうこ
夏うぐひす今日を限りか声しきり きょうこ 梅雨の月まるくふやけて昇りけり あやこ
ピースてふバラ揺れ止まず戦火かな あやこ 蛇の尾の草葉にすべて消ゆるまで 五郎
どんと据わる白紫陽花花の力かな 五郎 赤道の夏を引き寄せ白幽子 雄蕉
生類憐み野焼き禁止の草を刈る 雄蕉 万緑の中に小田原城下街 啓子
縄文に十薬あったかも知れず 啓子 夏蝶を追うまなざしや園児達
緑陰の木々の揺らぎや渡る風 弘棋 せせらぎに水車木道花菖蒲 弘棋
山法師恩師と巡る鎌倉寺 掌に一粒の紅さくらんぼ
天守より落城偲ぶ夏の雲 啓子 喉満たしボトルを満たし岩清水 あやこ
時の日や役場のメロディー五時丁度 きょうこ



2024年7月定例句会第156回
冥府までデジタル切符閻魔王 雄蕉
じいじいと蝉に言はれて知る齢 弘棋
漆黒の光の小径富士登山
畳の間古き扇風機昭和の人 きょうこ
度忘れも茶番となりて梅雨明ける 啓子
炎天や自前水分ラッパ呑み 五郎
山法師汀に影を灯したる あきこ
藪入りや柳行李の母の衣 あやこ
補助輪を外しふらつく夏休み
織姫逃げる超新星のベテルギウス 雄蕉
成仏はお預け閻魔嘆くなり 雄蕉
風鈴の音色かそけし風の詩 弘棋
夏蝶の風に戻され操られ きょうこ
片陰もない昼の坂登りきる 啓子
鮎寿司を父と味わふ夕の膳
梅雨明けや高まる雲のたたずまひ 五郎
どの家も窓開けてあり梅雨晴間 あきこ
岩清水右手左手喜ばす あやこ
父の日よ戦後の苦労今切に 啓子
海はもう見るだけのもの夏休み 綾子
銀河行く冥途の列車まだ土星 雄蕉
海の日といえども乙に山歩き 弘棋
平和といふ線香花火の儚さよ きょうこ
クラス会老ひを背負えし夏帽子
サックスは遺品となりぬ婿の盆 啓子
炎帝の怒り太陽のフレアかな 五郎
青空に開く泰山木の白 あきこ
身の内の怖さ金魚を追い詰める あやこ
御仏の伏目やさしく百合の花 藤枝
ささやかなことがしあわせさくらんぼ あきこ
雪残る夏山遠くテント張る きょうこ
炎天や木陰の鴉口を開け 五郎
備前焼白百合の白際立てり きょうこ
初蝉やあっという間ににぎにぎし
住み古りし家の安らぎ蝸牛 啓子
その角を曲がれば光る夏の海 あきこ
海鳴りの届く縁側心太 あやこ
炎天や海広々と水の星 五郎
とりあえず先ずはビールと閉ずメニュー 弘棋
冥途旅故障発生月止まり 雄蕉
片陰に入りて無となり己が影 弘棋

2024年8月定例句会第157回
夏五輪光織りなすエッフェル塔 五郎
片陰をひろひて皆一列に歩む ヒサ
みちのくの曳山ひいて秋の空 きょうこ
断簡の筆文字光る宵の月 雄蕉
百日紅けだるき日々に色を添え 啓子
暮れなづむ空美しや星祭 あきこ
片陰を探し探して移り行く
秋暑し俥夫の背中や古都の風
武器持たぬ誓いは何処終戦日 弘棋
行く人の傘をおちょこに台風過 弘棋
円安の淵の日本や月通る 雄蕉
宇宙への夢を広げる星祭 五郎
十代のメダリスト増ゆ雲の峰 五郎
カッカと又トマト好きのリス親子 ヒサ
母の声冷やし西瓜や井戸の中
到来の桃の蘊蓄卓の上 きょうこ
身の丈に合う寄合や村の月 雄蕉
八月や不戦を信じ祈る月 啓子
対岸の安房の灯近し星月夜 あきこ
静寂やつまむ花火の落ちるまで
聖火台空に浮かびて夏五輪 弘棋
朝顔の明日咲く色のほのかなり あきこ
散水時一人虹見る朝の庭
生きものに危険な暑さ今日も又 啓子
米を研ぐ手に新涼の水走る あきこ
秋立つや風にうなずく庭の花 弘棋
初蝉や止まる窓辺の馬鹿笑い
逝きし人皆微笑みて銀河濃し 啓子
絵すだれの間々に風受く八百屋かな ヒサ
家の周り集まるゴミも晩夏かな 五郎
買い物の袋どさりと猛暑かな ヒサ
天の川光流るる富士の山
老二人とぎれぬ会話月見豆 きょうこ
虫すだくあこち浮かぶ無力感 雄蕉
手に負えぬ雑草に脱帽終戦日 きょうこ
語り部の記憶をつなぐ蝉しぐれ
ぶぶ漬けを出すも居座る残暑かな 弘棋
底紅の閉じて暮れ行く空の色 あきこ
子規の忌や健啖ぶりの切なかり 啓子
月上がる先祖話で盛り上がる 雄蕉
墨の濃き卒塔婆かかへ施餓鬼寺 きょうこ
じりじりと気温上げゆく蝉の朝 五郎
座禅のごと泰山木の花開く
しゃぶしゃぶの真青に踊る新若布 ヒサ
聞けば忌み聞かねば思ふ蝉の声



2024年9月定例句会第158回
朝刊のにほいに目覚む秋の風 きょうこ
大和路の旅ゆく人も秋の貌 雄蕉
天空に魚探欲しきやいわし雲
子規の顔似てずっしりと洋の梨 弘棋
散歩道あゝ秋だよと風流る
梢みな月の光にとけゆけり あきこ
プレイバック稲穂波立つ休耕田 きょうこ
夫呼ばむ窓いっぱいに月昇る あやこ
実り供え見上げて拝し月見宴 ヒサ
蝉しぐれ日増しに終の声ひびく ヒサ
草に木に我にも残る暑さかな あきこ
みちのくの棚田へ降りる月の脚 あやこ
夏休み明けの挨拶歯の白く 五郎
武士の安堵の一瞬や萩の寺 きょうこ
墨擦りて料紙に向かう良夜かな
秋風や瓶に足されしシーグラス
魚跳ねて波紋や一つ秋の水 弘棋
柿の種植へて余生の道しるべ
うまい声テレビを消して秋の夜半 雄蕉
秋の夜や暴走族の音止まず ヒサ
水色の空に一刷毛秋の雲 弘棋
画廊出て角を曲がれば風は秋 あきこ
秋時雨信号待つとりどりの傘 ヒサ
娘の背には追ひつかぬ声大花野 きょうこ
天上は涼しからむに先祖来る あやこ
設へは心ばかりの月見かな 五郎
秋の空夕陽と遊ぶ明日は晴
金泥の折り目ふやけし秋扇
客船の大桟橋や今日の月 弘棋
流れ星夢から聴いた天の声 雄蕉
涼一献厳禁解けし亡父に注ぐ あやこ
落ちついた昔の顔や秋深む 雄蕉
秋の蝶後先となり山ガイド
秋陽射し大樹は影を伸ばしゆく きょうこ
海風の博文旧居紫苑咲く あきこ
偉大なるもくもく迫る入道雲 ヒサ
風の音共鳴の音秋の鈴 あやこ
常夏の国に列すかこの秋暑 五郎
芒原をかき分け進む迷路かな
蜩も景色となりて茶の湯かな
子規庵の庭訪ふ人や糸瓜棚 弘棋
俳画付き掛け軸無くて秋の暮 雄蕉
月明りを穢し砲火の飛び交へる 五郎
いつまでも手元放せず秋団扇 五郎
身に入むや灯すも消すもひとりの夜 あきこ

2024年10月定例句会第159回
木漏れ日に揺れて水引草の紅 あきこ
新米や故郷の漬物よき合性 五郎
放課後のような老後に花野あり 啓子
くずし文字読めぬ便りや秋惜しむ
角曲がるもいちど月を見て曲がる あやこ
朝食に庭の秋菜を補いぬ ヒサ
故郷を忘れじ鮭の眼かな きょうこ
好き嫌い選挙は罪に破れ蓮 雄蕉
来し方は泡沫なれど今朝の秋 啓子
リュック背に歩く野山を秋の声 弘棋
夕風にそよぐ芒や憩ひけり ヒサ
暮れのこる空のみづいろ酔芙蓉 あきこ
月影にはて空耳かドビュッシー 弘棋
火の手のごとく紅葉迫る鏡池 あやこ
当世も餅は手打ちか月うさぎ 弘棋
臭覚に安らぐ心金木犀 啓子
広島にどんとノーベル平和賞 雄蕉
天高し雲に形あり名もありて きょうこ
読経のこぼるる寺や秋立ちぬ ヒサ
庭に出す猫脚の椅子月今宵 あやこ
髪染めし八十路の心星月夜
異常なき診察結果後の月 五郎
蜩や夕べやさしく来てをりぬ あきこ
さはやかや五十五十の新記録 あきこ
秋萩の梢揺らしつ渡る風
束として死のある国よ望の月 あやこ
焦げるほど丸裸なり今日の月 五郎
朝のうち草取り急ぐ老一人 ヒサ
ナナカマド乗り合いバスの窓ふるる きょうこ
世渡りはさらりと交わす文化の日 雄蕉
秋高しそろそろ遺影決めようか 啓子
足一本案山子や打ちげ本塁打 弘棋
浦島を呼び込む女冬近し 雄蕉
青春と一夜の夢と曼珠沙華
朝寒やまづ湯を沸かす厨ごと あきこ
中東に火柱絶えずそぞろ寒 五郎
箱根路の淑女三人宿の秋
一面のこぼれ萩満つ空家かな ヒサ
細く長く棚田を区切る彼岸花 あやこ
街燈の先の足早秋の暮 きょうこ
尽きぬとも俳句の縁の夕紅葉 雄蕉
露けしや関谷不動の水の音 啓子
谷間の山家にひとつ秋灯し 弘棋
カタカナの葡萄の粒の甘さかな きょうこ
秋暑し母の唇濡らしゐる 五郎


2024年11月定例句会第160回
仰ぎ見る塔の高さや冬日和 あきこ
取り出だす冬服選ぶ温暖化
頂きし富有柿子等とうまかりし ヒサ
上州路記憶に残るぶな紅葉 啓子
運命の冬敲く匙無き政治 雄蕉
木枯しの過ぐるを待ちて雨戸開け きょうこ
水鳥の滑る縮緬銀波かな 五郎
同郷を誼む蜜柑に有田皿 弘棋
枯枝をおろす夫の背冬の蝶 きょうこ
人込みを小さき熊手とすれちがふ あきこ
やはらかな日ざしにゆれる枯野かな あきこ
秋展やマウスアートの紅沁みる ヒサ
神無月若き血潮の学園祭
秋澄むやどこかで戦血の匂い 啓子
チェロの音で愛のダンスの小春日和 雄蕉
神木のざわざわざわと神の留守 五郎
母似なる人とベンチで日向ぼこ きょうこ
山頂で観る山並みの夕紅葉 弘棋
台風の眼に目を凝らす予報かな 弘棋
今年米炊いていただく至福かな 啓子
木漏れ日の谷戸に落葉降りやまず あきこ
夕食に一味優るスダチかな ヒサ
枯葉に一筋の風添えにけり
仁王門くぐれば古寺の大銀杏 啓子
バイオリンエフ字孔から冬茜 雄蕉
初雪や地球に訳あり百三十年 きょうこ
黄落後神経系のやうな枝 五郎
人波にもまれ漂ふ熊手かな 弘棋
寄せ鍋のスクラム解かぬ榎茸 五郎
老いてなほ気づくこと多し秋の暮 ヒサ
対岸の灯火かがやく冬の暮
寒暖の秋クローゼットの入れ乱れ ヒサ
侘助やしずかに夕べきておりぬ あきこ
行楽はテレビで済ます老いの秋 啓子
無精ひげ生やす黙ってラグビーファン 雄蕉
様々な落葉踏む音様々に きょうこ
足腰に弱み抱へるそぞろ寒 五郎
竜灯も夜春節の中華街 弘棋
トランペット頬に木枯し散らしける 雄蕉
稽古終え家路へ急ぐ冬日暮

2024年12月定例句会第161回
青空の青どこまでも冬来る あきこ
秋うらら健診結果異常なし ヒサ
シングルマザーの涙や恋やクリスマス 雄蕉
輝いて褪せて静かに山眠る 啓子
さざんかの花ほろほろと雨上る あきこ
雲の群塗り絵の如き冬の朝
第九聴くホールに香る師走かな 弘棋
錠剤の転がりて起つ寒夜かな あやこ
裏表なしに道散る木の葉かな 弘棋
隣家の子サンタに抱かれママ探し きょうこ
枇杷の花又明日ねと手を振りて きょうこ
ズワイガニのキャンペーン紙面赤一色 五郎
木漏れ日の表参道銀杏散る あきこ
老いの身の今年限りと煤払ひ ヒサ
雪静か積もるも難儀方丈庵 雄蕉
青春のアルバム消去冬の晴 啓子
青き空とび円描く冬日和
冬ざれの牛に黄色と赤のタグ あやこ
薄墨を空に流して冬ざるる 弘棋
心不全をふうはり包むカーディガン あやこ
冬至日や無病祈願南瓜食ぶ ヒサ
一部屋を突き抜け届く冬至の日 五郎
笹鳴きを聞ける倖せ荒れし庭 五郎
大方は散りていよいよ冬隣 啓子
夕映えに色を尽して冬紅葉 あきこ
冬日和石段研きあと二段 ヒサ
コンビニの屋根は富士山雪景色 雄蕉
荒草に色添えにける石蕗の花
小春日の窓辺や猫の指定席 弘棋
大きく太く草千里抱く冬の虹 あやこ
冬木立ペン画の如き小枝かな
ゴミ漁り人だかり見る寒烏 雄蕉
人生を浮き沈みして柚湯かな 五郎
身の丈の歩幅で歩む師走かな きょうこ
息白しかつては歌い切る高音 五郎
年の瀬や昭和を背負い令和まで 啓子
欄干の朱に白添えて冬かもめ 弘棋
島原の昔話を北風に聴く あやこ
二胡の音に草原駆くる冬日向
残る世は一日勝負実南天 啓子
大晦日澄み渡る世のメゾソプラノ 雄蕉
友からの万華鏡の美秋一日 ヒサ
踏み歩く落葉の音を楽しまん あきこ
集めては梟と化す枯芒 五郎
年の瀬の大売出しと昭和めく きょうこ
枯落葉憂国の地にそれも無し きょうこ

2025年1月定例句会第162回
入日燃え寒林の色鮮やかに あきこ
七草の粥のストンと腹に落つ きょうこ
初夢は子どもの頃の思い出と ヒサ
冬の旅心のままにいざ出発
手馴れたる手返し上々餅を搗く 五郎
初富士や吾妻山より相模湾 啓子
鐘の音に想ひや如何に除夜の能登 弘棋
門松に望みこめたる詫び住まい 雄蕉
年毎に手抜きの多くおせちかな ヒサ
新年や巨大な無知のご来臨 雄蕉
バスの中くしゃみし人をそっと見ゆ
復興の能登に冬木の芽の緋色 あきこ
牛歩でもはじめの一歩年新た きょうこ
やることのまだまだ多く年迎ふ ヒサ
除夜の鐘煩悩失せし小夜耽り
新春や往路復路に夢つなぐ 啓子
成人の祝辞も空に見るスマホ 弘棋
幣を振り穢れ吹き飛ぶ納め札 雄蕉
箱根路を夢に走りて寝正月 弘棋
賀状にも定年ありととぐろ巻く きょうこ
年玉に手を出す孫に背伸びして
夜更けまで準備いろいろ年の暮 ヒサ
冬の富士江の島踏まえ海は凪 啓子
ふと香る夫亡き部屋の水仙花 あきこ
大吉を枝に結びて年初め きょうこ
松過ぎて百に間のある一人旅 啓子
寒晴れや水面に弾く日の光 あきこ
ふぐ刺しを箸にまとめて二三枚 五郎
人は皆道それぞれに去年今年 弘棋
能登の華右往左往で雪の下 雄蕉
暮早し闇にとけゆく山の色 あきこ
一輪の水仙部屋を明るうす きょうこ
大雪に吾子の結婚空仰ぐ
思い出の冬コートの捨てきれず ヒサ
初春の丹沢山地揺らぎ無し 啓子
あれもこれも絶てり服喪の三ケ日 五郎
急逝に心乱れる初鏡 五郎
遥かなる山を影絵に初茜 弘棋
神棚に三百年の初日の出 雄蕉
先立たれ独り見上ぐる冬の星 五郎

2025年2月定例句会第163回
立春や梢は早もほの紅し 啓子
何事もなく暮れ蜆汁旨し あきこ
手の平にふはりと消へし春の雪 あやこ
身に凍むやテレビ相手に一人酒 ヒサ
竜天に登る天下に叱られる 雄蕉
春一番テニスボールを打ち返す
豪雪に地軸の歪みなかりしや 五郎
春霞海分かち行くクルーズ船 きょうこ
大雪の予報にひそと春立てり 弘棋
蝋梅の香に誘われて寺の庭 弘棋
午後からは雨を呼ぶ風草青む あきこ
控えめに常なる暮し春間近 啓子
蒼天に応へ紅梅満開に あきこ
除雪車の音に目覚めし能登の宿 あやこ
純白に真青の目立つ七草粥 ヒサ
スマホ手に暇暇で魚氷に上る 雄蕉
春の池静寂破る鯉の群 きょうこ
散歩道踏むに踏まれぬ落椿
春の雲地球自転を超えにけり 五郎
風強く吹く風強く春一番 弘棋
自転車を独り起こす子いぬふぐり 五郎
冬鳥の片足立ちの岸辺かな あやこ
長閑しや鳶悠々と不動池 啓子
紅梅やその先無垢の青い空 啓子
水音に風音に聴く春の声 あきこ
餌台にメジロ来ている三時かな あやこ
生きること気力なりけり年新た ヒサ
鷹鳩に化すや女の言ひとつ 雄蕉
バレンタインデー父母知らずこの文化 きょうこ
東雲のグラデーションの冬の朝
縁遠きすてきなバレンタインの日 五郎
吹く風に襟を立てたる余寒かな 弘棋
春の山佳き鳥の声にぎにぎし
冬晴れや木守柿見ゆバス通り ヒサ
早春や三浦大地に日差し濃く 啓子
白梅の明日を待たず枝走る きょうこ
早春の光ついばむ雀かな あきこ
窓中に光の春の来てをりぬ あやこ
ふと気づき句を書きとむる夜長かな ヒサ
いつの世も踏み絵の重み生き残る 雄蕉
うすらひや「今年こそは」とスマホ切る きょうこ
春光や謝する事多し古寺巡り
新しき黒き位牌に梅一枝 五郎
心待ち心置きなく梅の花 弘棋
創世の旅書き直す春のガザ 雄蕉

2025年3月定例句会第164回
日だまりの石垣を割り花すみれ あきこ
雪予報外れて友とハイキング ヒサ
単線のホームに春の降り立ちぬ きょうこ
春めくや開花予想の立ち始む 五郎
西国の終い霜とや旅支度 あやこ
桜花太平洋に沈みけり 雄蕉
彼岸会や悟り浅きも御念仏 啓子
抱く犬の強き鼓動や春の風
車窓より望む田浦や枝垂れ梅 弘棋
幼少の思い出祖母と蓬餅 弘棋
初島を少し浮かせて春霞 あやこ
ふるさとは風ゆるやかに桃の花 あきこ
春の日や終日たゆたう飼い葉桶
若布干す浜辺の風はふかみどり あきこ
森抱く池や春光集めをり きょうこ
草も木も春光溢る中にあり ヒサ
何々の日の乱発や山笑ふ 五郎
朱の椀に大蛤のあぶくかな あやこ
杜甫と逢う長生の春爛漫と 雄蕉
散歩道巡り巡りて梅見かな
如月を踏んづけ歩く散歩かな 弘棋
北国に申し訳なき都市の雪 啓子
古年の栞めくりて春浅し
咲きて四分散りの六分で桜かな
春を消す魔法使いの齢なり 雄蕉
タンポポの一皿卓は春呼べり きょうこ
高原の水の匂ひやレタス食ふ あきこ
針山に針古びたり針供養 きょうこ
朝冷えの洗顔ポットの湯に目覚む ヒサ
春光や絵馬を探して笑み返し
忌明けなほ残る寒さの厨かな 五郎
春の日や笑い弾ける落語会
白魚に光の透きて海テラス あやこ
春の海言い足りずただ別れけり 雄蕉
早咲きの桜見たくて松田山 啓子
春雨のけぶる港に染む汽笛 弘棋
鳥雲に思い叶わぬ拉致家族 啓子
バチカンの教皇も人春の風邪 五郎
春の山ゆふべの雨に匂ひ立つ あきこ
母想う深き香りや沈丁花 きょうこ
麗しき富士を眺めて墓参り ヒサ
生きてゐしシーラカンスや春の海 五郎
行き戻る光のあゆみ春淡し あやこ
たむろする大師遍路の渇きかな 雄蕉
白球を追ふ少年に春の風
桃咲くや甲府盆地に色を添え 啓子
一人急く家路を照らす朧月 弘棋
望む雨降れば心は散り桜
ただいまに迎える香沈丁花
パエリアや絞るレモンの春立ちぬ ヒサ